朝焼けを眩しいと感じたのは初めてだった。

銀は目を細めながら、廊下からぼんやりと外を眺めた。所謂縁側という場所か、銀の部屋は障子を開けると直ぐに庭の景色が広がる場所にあった。

そのせいか、秋の夜は少しばかり冷え込むようで、深夜に布団からふと足が出ると寒くて目が覚めた。そんなことを繰り返していると、いつの間にか深く眠れなくなり、早朝に部屋から出たのだ。

つい昨日までは熟睡していた。なのに、今朝方に限って、よく眠れなかったのだ。

──急に冷え込んだのか。

銀はそんなことを思いながら、山の向こうから昇ってくる太陽を眺めた。

その名の通り、太陽のような明るい陽。人並みより小さな体で彼が抱え込む事柄を知りたいと思った。銀が知らないのは、嘗ての鬼神姫達のことだけではない。

陽が抱え込むことも、だ。

上辺だけは知っている。

それは、此処に連れてこられる前に聞いた。でも、それが全てだとは思えなかった。

泣きすがる少女の姿が不意に脳裏に浮かぶ。長い栗色の髪を振り乱し、大声をあげ、泣き、叫んでいた。そして、陽の男にしては細い腕にしがみつくようにしていた。

けれど、陽はその少女の腕をいとも容易く振りほどいた。しかし、その横顔には苦痛の表情が浮かんでいるようにも見えた。