「その口調、どうにかなんねぇ?」

「口調、ですか?」

雪弥は予想外の言葉に首を傾げた。

「そう。その、何て言うか、丁寧な口調だよ」

そうは言われても、雪弥は生まれてこの方、こういった話し方しかしたことがない。勿論それは、幼い頃からだ。

鬼神姫という存在であることから、幼い頃から教育されてきた。話し方から所作、そして勉学。全てが鬼神姫となるべく者としてのことだった。

なので、口調をどうにかしろ、というのは雪弥にしてみれば無理難題なことであった。

「そうは言われましても……」

「俺は別に気にならん」

「私もです」

陽と巴が口を揃えるようにして言ってきた。ということは、気にしているのは銀だけということになる。

「でしたら、多数決でこのままということで宜しいですか?」

雪弥が言うと、銀が何で多数決だよ、とぼやくように言った。

そもそも、親しくなるつもりはないと言ったのは銀の方だ。ならば、別に口調などどうでもいいだろう。会話が成り立てば何の問題もないのだから。

雪弥は話を終わらせ、それから散らかした菓子を片付けるようにと命じた。