鬼神姫(仮)

「準備が整いつつあるようですね」

翼はやはり単調な声色で言う。

「思ったより、早いね」

もっと難航するかもと思っていた。記憶を有していない人間共が簡単に鬼に協力してくれるとは思えなかったのだ。もっと難航し、もしかしたら間に合わないかもとさえ思った。

それならそれで話は簡単だったのに。

しかし、それでは意味がない。殺せばいいというものでもない。

殺せばいいだけならば、何時でも出来る。でもそれでは、意味がないのだ。殺すだけならば、自分だけだ。力が必要なのだ。自分だけの力だけでは意味のないこと。

「作戦勝ち、かな?」

酉嶋は口許だけでくすりと笑った。

「強行手段とも言えますが」

翼が少しばかり非難めいたように言う。こんなふうに言う翼は珍しい。

「だって、皆の為だもの」

酉嶋はそれに意地悪く笑う。

「呉。後少しだよ」

酉嶋はそれだけ呟くと、掌の雛鳥に微笑み掛けた。