鬼神姫(仮)

静かな空間。

山奥に構えた小さな社の中で酉嶋は目を閉じた。

そこに流れてくるものは何もない。ただ静かに己に流れる血を感じ取るのみ。心臓の動きから、血流を感じ、その熱さを体の末端まで辿る。

指先、足先まで。

そこまでを辿り、また心臓に戻る。

そして、心臓から小さな火を取り出すようにそこに手を翳す。手を握り、そっと開くと、そこには雛鳥が現れた。

「誕生日、おめでとう」

酉嶋が言うと、雛鳥はちぃ、と鳴き声をあげた。灰色の羽根に、雛鳥にしては尖った嘴。それは鋭く光っている。

「また、産み出したのですか?」

単調な声色が社の中に響く。

「僕に出来るのはこれだけだからね」

酉嶋は掌に乗せた雛鳥を指でつつきながら返した。

声の主はそうですか、と言う。長い黒髪に、漆黒の瞳。その顔に表情というものは見れない。美人というよりは、少し癖のある顔だけれど、綺麗には分類出来る。

「ねぇ、翼」

酉嶋の呼び掛けに、女──翼は小さく首を傾げる。それでもそこに表情はない。

「あちらの様子はどう?」

酉嶋が尋ねると翼は静かに目を閉じた。長い睫毛が頬に影を落とす。

暫しの間、社の中には静寂が漂う。そこに小さく混じる雛鳥の鳴き声。

翼はふと目を開けた。漆黒の瞳は何処か宙を見ている。