「ま、確かに」
御簾の向こうでは可笑しそうに笑う声がした。
彼──白瀬とこんなふうに会話を交わすのは初めてのことだった。
「でも俺は、あんたと夫婦になるつもりはない」
白瀬はきっぱりと言い切り、御簾を上げた。そこに初めて見る白瀬の素顔があった。
真っ白の髪に、真っ赤な瞳。もう、何百年と生きているはずなのに十代にしか見えない風貌。背丈は雪弥と然程変わらないように思えた。
「ですが、それは運命なのでは?」
雪弥は背筋を伸ばし、正座をした。
「運命も何も、運命は変わる予定なんだろう?そもそも、最初の運命通りあんたが死んでしまえば、それもなくなる。俺の力なんて、可能性の話なんだ。一つがずれてしまえば、他もずれる」
初めて聞く話だと思った。
白瀬の予言は絶対のもの。そう思い込んでいたのだ。しかし、冷静に考えれば違うのだ。
確かに、雪弥の命は尽きると予言したのに、番人が揃えば運命は廻ると言った。どちらも、可能性のある未来。
ということは、確実な未来など何処にもないということ。全てが可能性の話。そういうことだ。
「それで?」
白瀬はどかりと雪弥の前に胡座をかいた。そうすると、更に小さく見える。
小柄なのは知っていた。だけれど、こんなに童顔だとは知らなかった。
「……方法を、教えて下さい」
雪弥は白瀬に深く頭を下げた。
白瀬知羽。
此処等の鬼の中で、一番長い時を生きている鬼。過去の鬼神姫、葛の存在をも知っている鬼だ。

