咎人なのか。
地塗られた刀をその手に提げ、その鋒からは鮮血が滴り落ちている。ぬらりと妖しく光る口許にも鮮血がつき、それはまるで唇に鮮やかな紅をさしたようだ。
煌びやかな華の刺繍を刻んだ藍色の着物にもその血は飛び散っている。大きな白の牡丹はまるでその模様だとでもいうように大きな花弁に血を認めている。
その人は真っ赤な唇を静かに動かした。小さく動く唇から音が洩れることはなく、何を呟いているのかは判らない。ただそれは、目の前に転がる骸に向けてのもののようだ。
その骸は息をしていないのは一目瞭然というばかりに紅く染まっている。俯せに倒れるその顔はどんなものかは判らない。
恨みを携えているのか、それとも哀しみを携えているのか。
ただ、月夜の下で見たなら嘸や光り輝くであろう金色の長い髪も血に染まっている。そして細くしなやかな指を地につけ、それは真っ白だった。
その骸を見下げる瞳に光りはない。あるのはただ無。虚とでも表すべきか、そこには何もなかった。