俺の今までの努力は…

決して無駄じゃなかった。

ほのかが俺を信頼する思いに、涙が込み上げてくる。俺が泣いてどうするんだ。

ほのかの涙を拭ってやれるのは俺しかいないのに。

その言葉が聞こえてきてからしばらくすると、徐々にほのかの体の震えは落ち着いてきて、

俺の頬にあった両手がゆっくりと降りて…

きれいな目からはらはらと俺の代わりに大粒の涙が堰を切ったようにこぼれた。

「よかった。大丈夫か?」


ほのかは涙を零し続けながら何度もこくりとうなずく。

「このままそばに居て欲しいか?」

と訊ねると、もう一度うなずく。愛しい。こんなにも怯えているのに。

震える姿も、静かに零れる涙も、全部…

俺だけしか知らないほのか。こんな姿を見せるほのかがただただ愛しかった。

「手…

握っていてもいいか?」

無言のままぎこちなくほのかがもう一度こちらに手を伸ばしてくる。

俺はほのかのなすがままにした。ほのか。もう大丈夫だから…

怖がらなくていい。

「少し目を閉じたら?そばに居て欲しいなら、そうしてやるから…」

俺の言葉に従って素直にほのかが目を閉じ、

静かにソファーに寄りかかった。俺は、ほのかの手を握りながら静かに頭を撫でる。

いつもはさらさらと流れるような黒髪が、今日はもつれていた。

そのもつれをほどくように、ゆっくりと指を差し入れて撫でつけていく。