これはもしかして…

早くほのかから離れなければ…

俺は、素早くほのかの身体の脇に両手を突いて体重を移動してから起き上がり、

ソファーを降りて床に膝をついて座る。

ほのかは、正気のない目をして、ソファーの上に起き上がり座る。

身体は小刻みに震えたままで、涙は止まっていた。

「ほのか。ほのか?」

穏やかにそっと彼女の名を呼んだ。

その声にほのかは静かに目を見開いて俺を視界に入れてくれた。


「大丈夫だ。嫌がることはしない。何をしてほしいか教えてくれ」


ほのかは震える両手をゆっくりゆっくり伸ばす。

何をするのかと思えば俺の頬に指先を伸ばしてそっと触れた。

そして両頬を手で包み込むようにすると、ゆっくり俺の顔を自分の方に向かせる。

とても親密な距離に、戸惑わないわけではなかったが、俺は抵抗することなく、

ほのかのされるがままになった。

ほのかの震えが伝わって俺の視界が小刻みに揺れる中しばらく見つめ合う。

ほのかの触れる指から、ほんの少し温かく溢れるような思いが流れてくるような気がした。

『「佐々木さんの所にいれば、大丈夫。もう怖くない」』

ほのかが自分にそう言い聞かせるか弱い声が俺の心に入ってくる。彼女の心の言葉。