想い人




さえぎられた言葉の続きは


目に涙を浮かべた看護士さんを見ると言えなかった。



(最後の一年は、翔くんは私のこと覚えていなかった。記憶の中に私はいなかった。)



言えなかった言葉が胸を叩く。



「んじゃ、私仕事に戻るね」



看護士さんはそれだけ言うと、そそくさと部屋から出て行った。



残された私は、ただ右手に預けられたらノートの重さをひとりぼっちで感じていた。