夏休みにこっちに戻って来た時、所長の気遣いで、本社に二日間、出社したことがあった。

一日目は、会議に出たり、札幌の営業所の営業成績の報告をしたり、普通に仕事をした。

でも二日目は、朝から面接だの研修だのが続いておかしいと思ったら、予定もないのに、なぜか本社の偉い人に呼ばれた。



海外赴任組の中に、実家の都合で退社する人がいるらしく、近々、それに伴う大きな異動が出るらしい。

普通は既婚者が行くパターンが多いんだが、君は成績優秀だし、将来もある、もし興味があれば、考えてみてほしいとのことだった。



確かに単身、未婚、20代の海外赴任は、うちの社内ではあまり聞いたことがない。

だからあの時、面接で、結婚の予定はあるかどうか聞かれたのか。

「ステディな関係の方はいますか? 」なんて、いきなり聞かれるから面食らったし、その質問を当時の不安定な心優を目の当たりにして答えるのは、正直、ちょっと辛かった。