がっくりと肩を落とす透理だったけれど、衣食住は保証すると言われて、それが確固たる約束として実行されるのであれば当面の現実問題の大半がクリアされるのだということだとは想像がつく。
夢なのか現実なのかイマイチはっきりしない状況ではあるものの、現実であろうが夢あろうが、路頭に迷うのはごめんだ。
そんな透理の願いが届いたのか、その男ははっきりと頷いた。
『この安倍清明、一度交わした約束は口約束であっても決して違えん』
自信たっぷりに、名前に誓った男。
……ちょい待て?
今、この男、安倍清明とか言わなかったか?
安倍清明って、あの安倍清明か?
日本史が得意ではない透理でさえ、聞いたことのある名前だ。
歴史小説やら怪奇小説やらで良く題材に取り上げられてる名前。
「は?……ホンモノ……?」
透理は呆気にとられたまま呟いた。
その言葉はしっかり届いていたらしく。
彼は言った。
『いかにも。僕の名前は安倍清明。まあこれでも陰陽頭だし、自分で言うのも何だけど、今上帝からもそれなりに信頼されてるから、安心していいよ」
彼はニコニコとしていたけれど、透理にしてみればその言葉の内容はともかく、その笑顔は胡散臭いとしか思えなかった。
ってゆーか。


