清明から渡された書物は、以前、役に立つはずもなく。
だって、相変わらずミミズが手繰ったような文字なんだもん。
読めないっての。
とりあえず、盤と睨めっこしてみるけれど、付け焼き刃でどうこうできる問題じゃないなぁ…と。
盤を眺めるものの、心は遠くに飛び立っていくのですよ…。
こくりこくりと首が前後に振れるのは、自分でも思った以上に早かった。
どれくらいそうしていたのか。
「ほほう?舟を漕ぐ程度には簡単だったようだね、透理?」
額を指で突かれて、夢現の状態から現実に引き戻された。
目の前には、清明の美しい顔があった。
ただし、その顔には果てしなく背筋が凍るような冷たい笑顔が咲いている。
「あ、あーーっと…?これはですね、その夢で未来を見ることが出来るかなーっていう実験で……」
「へぇ?透理は夢見が出来るのか。それは初耳だね?」
うあーん!怖い!本気で怖いっ。
清明からますます冷気が立ち昇ってる気がする。