「ところで清明。透理の修行とやらの進み具合はどうじゃの?」


先程2人に極寒を与えた玉若は、そんなことは知る由もないという様子で尋ねた。


汁物を置き、蕪の漬物を突いていた清明は、それを食わえながら顔を上げ。


「清明、行儀が悪いっ!」


ぴしゃり、と玉若に怒られた。


そこで透理はふと疑問に思う。


「あのさ。清明と玉ちゃんって、どっちが強いの?」


透理にとっては至極素朴な疑問だったのだが、途端に2人が目を剥いた。


「僕!」

「妾に決まっておろう」


勢い込む清明と、そんなの当たり前の顔の玉若。


「うん。2人とも譲る気なしってことね」


ここは下手に突かない方が身の為のような気がした透理は、苦笑で誤魔化した


…つもりだった。


しかし、透理はこの時既に、この邸で最大の禁則事項に触れてしまっていた。


注意事項ではなく禁則事項である。


「譲る譲らぬの問題ではない。妾の方が強い」

「いや!僕の方が強いに決まってるだろ!僕の方が強いからこそ、肝心な所では僕に逆らえないじゃないか!」

「勘違いするでない、清明!そなたは我が敬愛する葛葉の子。妾はそなたに甘いだけじゃ!」