このままでは、彼女は邸を抜け出し兼ねない。
もちろん幾重にも複雑に編んだ結界に守られたこの邸から、そんな簡単に出れるとは清明も思わないが、無自覚の霊力がどう作用するかわかったものじゃない。


かと言って、玉若に今以上透理のお守りをさせるのも少しだけ、ほんの少しだけ申し訳ないとも思う。


というか、清明とて玉若の逆鱗にはあまり触れたくない。


「じゃ、透理。こうしよう?今日から護身の訓練をしよう。僕が町に出ても大丈夫だと判断するとこまで上達したら、外出してもいいよ」


ようは透理に暇潰しを与えておけば良いのだ。


護身の訓練ついでに、ダダ漏れしまくりの高出力な霊力を操れるようになってもらおう。
うまく扱えるようになれば、自分の仕事を手伝わせても良いかもしれない。


うむ。なかなか良い案だ。


清明がにっこり笑えば、透理が警戒心も露わに、一歩後ずさった。


「な…… なんか今、悪寒が…」


なかなか勘も鋭いらしい。


これは鍛え甲斐がありそうだ。


清明はほくそ笑んだ。