「せーいーめーいーっ‼」


どたどたと廊下を走ってくる音に、清明は軽く額を押さえた。


この邸で、こんな元気に駆け回るのは一人しかいない。


「見つけた!清明!」


ききーっ!と音が聞こえそうな勢いで廊下を滑りながら止まるその姿に、猫の急停止を重ね、清明は苦笑した。


「透理。何度言えばわかるんだい?女性がそんなに…」

「あぁ、もう説教は聞き飽きたってば」

「……」

「それより!玉ちゃんと一緒なら外に出てもいい⁈」


昨日、危ないからと外出禁止を言い渡された透理は、今朝目覚めと共に思い付いて、朝餉が終わるなり、清明の部屋に駆け込んできたのだった。


「玉若は了承したのかい?」


あの人間嫌いな妖狐が了承するとは思えないが…と思って、清明は読んでいた書物を畳んで、透理に向き直る。


「これから説得する!そのためにも清明のお墨付きが必要!」


びしり、と人差し指を清明に叩き付け、仁王立ちする透理。


「透理はそんなに外に出たいのかい?」

「出たい!」


さてさて。困ったものだなぁ、と清明は腕を組んで考える。