「こらこら。あまり客人をからかってはいけないよ?」
ひょい、と清明はその生き物を摘み上げて、何やらぶつくさ言うと、それはポン!と小気味良い音と共に紙になった。
「さて。君の名前を教えて貰えるかな」
目を丸くする透理の前で、彼は何事もなかったかのように話を続け、釣られた。
「透理。水嶋透理」
「とおり、ね。改めて、僕は安倍清明。よろしく」
「はぁ……って、そーじゃなくて、今の何っ⁉」
いかん。この男のペースに完全に巻き込まれるとこだった。
なんだかなー。
どうにもこの安倍清明という人は独特の空気があって接しにくい。
「何って?あ、あぁ…これは式だよ。人型や形代ともいうけど、人間に見立てるより狐の方が見ていて和むだろ?」
ねぇ?と清明が近くにいた子狐を手招きすると、その小狐はちょこちょこと二本足で立って寄ってくる。
二本足で歩いてる時点で、それはもう狐とは言わないんじゃないだろうか。
まあ…可愛いのは認めるけど。


