坂口美里とガルダスト


「・・・・カ、カオリ?」


 ナンパ男を見送りながら、恐る恐るカオリに声をかける。


「どうしたの?」


 それに対して、平然とした顔で答えるカオリ。


 どうしたの・・・って・・・。


「今のは・・・何?何をしたの?カオリ?」


「ああ・・・。今のは、合気道よ。これでも小さい頃から習っているの。さりげなく有段者なのよ。」


 言いながら、カオリは服の裾をまくって、二の腕を見せると、笑顔で力こぶを作って見せた。


「あ、合気道・・・?」


 まさか、それも貴族のたしなみという気では・・・。


「あ、これは貴族のたしなみでも何でもないわ。一種の趣味と、言うべきね。」


 カオリが、私の表情から先読みして説明する。


「趣味?」


「そう・・・。私ね、小さい頃テレビのヒーローに憧れていたの。『カンフーアタック』って言う、テレビアニメ。そこに出てくる主人公のカンフーがかっこよくてね・・・。本当は私、道場に弟子入りして、本気で『来連寺拳法』を極めたかったのよ。」


「へぇ~。」


 返事を返しながらも、どこかで、聞いたことある話だと思った。


 小さい頃からテレビアニメに憧れて、終いには道場に弟子入り・・・。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・。


 ああ、そうだ。


 自分とソックリなんだ。


 自分も、小さい頃から、ガルダストに憧れて、将来は、自分でガルダストを作って、自分で操縦したいと、思っていたんだ。


 どこか現実離れしているような気がするけど、それでも、今の私には立派な夢だと思っていたんだ。


 でも、それが何を示唆するのかとなんて、今のカオリたちの世界を見れば、一目瞭然。


 私の夢は・・・いったい・・・・・・・・。


 私は・・・・・・何を作りたかったの?