坂口美里とガルダスト


「いや・・・って言うか、なんだろう?つかみ所がないって言うのかな?大げさな言い方をするなら、『生きている』というより、『死んでいない』って言った方が近いような存在。」


 喋りながら、手を洗う。


 鏡を見ながら、髪型を整える。


 兄貴の顔をして、兄貴の格好をした人間が、女子トイレの洗面器で手を洗う。


 すっげ~違和感・・・・・。


「え?」


 不思議そうなカオリの表情。


 ポケットからハンカチを取り出し、洗った手を念入りに拭く。


 花柄のハンカチ。


 兄貴の趣味だろうか・・・?


「なんていうんだろう?する行動、考え方、人との接し方が全部『演技』で出来てしまうような人間なんだよね・・・。本音は全然違うところにあるのに、その人に合わせて、平気で思ってもないコトを言える人間。」


「・・・・・・・・・。」


 突然、黙るカオリ。


 目がキョトンとしている。


「あ、もしかしてイメージ壊しちゃった?」


「うん。」


 正直だな~。


 なら、少しだけ弁明しといてあげるか・・・。