「このデザインで白があれば、もっといいんだけどなぁ~。」


 青い服を見ながらぼやいてみるが、洋服屋じゃないんだから、そんなこと言って出てくるはずもない。


「ああ、白はないけど、確か水色ならあったはずよ。サイズはMで大丈夫?」


「ハイ!・・・トコロで、この値段なんですけど・・・。」


「あなた、可愛いから200円でいいわ。その代わり、大切に着てね。」


 これだから、フリマ通いはやめられない。


 アンダーシャツ。サマーコート、ワンピースにブーツ。


 そこまで買っても、1500円。


「美里、重い~。」


 それらを全て、隆の持参した紙袋に入れる。


 もちろん、荷物を持つのは隆の仕事。


「大根なんて、買うからでしょ?」


 そこから除いているのは、二本の大根。


 フリマでは、よく自宅農業を営んでいる家庭が、販売しているものだ。


「母ちゃんに頼まれたんだから仕方ないだろう?だいたいお前、この前もブーツ買ってなかったか?」


「だって、サイズがぴったりの靴なんて、中々見つからないよ。しかも、300円だっていうからさ~。」


 残り財産は500円。


「だからって・・・。」


「いい天気だねぇ~。」


 あからさまな、ごまかし。


「おまえなぁ~。」


「さて、さて、松本おじさん。今日もいい品だしているかなぁ~?」


 隆の言葉を途中でさえぎり、私は必ずフリーマーケットでは最後に立ち寄るお店に向かう。


 公園の隅っこの方にビニールシートを広げて、その上に商品を並べている、普通のフリーマーケットのお店。


 ただ、他のお店と違うのは、その店に並べてある商品は、服でも野菜でも、古いおもちゃでもなく、何に使うのか分からないような、ガラクタばかりだった。