「まあ、そうだけどよ・・・。他にお前たまには、女友達とか呼べよな?」


「美雪に手を付けたのはどこのどいつだよ?兄貴が家にいて、簡単に友達を呼べるわけないでしょ?」


 スネに思いっきり蹴りを食らわす私。


「ぐわっ!」


 瞬間、兄貴の顔が苦痛に歪んでしゃがみこむが、こっちの知ったこっちゃない。


 みっともない姿だ・・・・・。


 思わず、思ってしまう。


 まったく・・・こいつが神谷高校の美男子コンテストで上位に食い込んだなんて、絶対ウソだ。


 私は、そんな兄貴の姿を横目で流すと、階段を下りて、玄関に向かう。


 坂口家は、これといったお嬢様の家庭ではないので、階段を下りれば、すぐ玄関である。


 素材は分からないが、木製の靴入れの棚の上には、意味なく『寿』と書かれた色紙やら、熊の置物が置いてあって、ある意味、この家の中では一番の高級感をかもし出していた。


 玄関を着飾るのは、見栄っ張りのやることだ。と、この前テレビでやっていた。


 お父さん・・・。私たちの家族はやっぱり見栄っ張りの家族だったんだね・・・。


「よぉ、美里。」


 玄関には普段と何の変わりない隆の姿が立っていた。


 短い身長に、ニキビだらけの顔。


 典型的な、生意気な15歳といわんばかりの顔。


 美男子と呼ぶには程遠い・・・。


「こんにちは、隆。どうしたの?」


「丸の内公園で、フリマやっているぞ。行ってみないか?」


 丸の内公園とはここから、三キロほど南に行った小さな公園。


 毎月、二度フリーマーケットが行われていて、今日がその日らしい。


 そういえば毎月その日は、二人のデートの日だったっけ・・・。