「かしこまりました・・・それでは、美里様こちらになります。」
しかし、アルマーニスーツはすぐに、表情を元に戻すと、手を差し伸べて、私を案内する。
さすが、プロ根性。この程度のことでは動じないのだな・・・。
「あれ?カオリ・・・さんは?」
思わず、カオリで止めてしまうと、危ない。
「あのような格好で、お食事をされてはお洋服が汚れますので、お色直しに行っておられです。」
お食事するためだけに着替えるのですね・・・カオリお嬢様は・・・。
私は、制服姿でカレーうどんも食べるよ。
「あ、そうなんですか?」
「それが何か?食事のときに着替えるのは、上流階級の当然のたしなみだと思いますが・・・。」
しかも、それが当たり前なんだ。
「あ、いや。何でもないです。・・・気にせず、案内を続けてください。」
アルマーニスーツはその言葉を聞いて、一瞬顔をしかめたが、とりあえず気にすることはないと判断したらしく、私を丁寧に案内してくれた。
歩いている間、思わず私は周りを見渡してしまう。
一面に引かれた赤絨毯。たぶん大理石で作られたであろう壁とそこに飾られている数々の壁画と彫刻・・・たぶん本物だと思う・・・。
はぁ~、これで総額いくらか考えてしまうあたり、私は庶民だよなぁ~。
「美里様。初対面で、このようなコトを聞くのは、大変失礼かとお思いですが、お嬢様のために、あえて聞かせていただきます。」
突然、私を案内してくれていたアルマーニスーツが聞いていた。
「な・・・なんでしょう?」
「美里様の御階級は、いったい何でいらっしゃいますか?」
「階級・・・ですか?」
聞きなれない単語だ。
中尉とか、大将とかということだろうか。
でも、私は軍人ではないし・・・。


