坂口美里とガルダスト


「お、おじゃましま~す。」


 家に入った瞬間、つい、クセで口にしてしまった。


 足元には赤絨毯。


 思わず、靴まで脱ぎそうになってしまうが、カオリが外靴のままだったので、そのまま入ることにした。


「いらっしゃいませ。」


 家に入った途端、出迎えてくれたのは、横一列に並んでいる5人のアルマーニスーツのボーイ軍団。


 もちろん、アルマーニなんていうのは私の勝手な想像で、それでも彼らの着ているスーツは、とっても高級そうに見えた。


 それより、この世界にもブランド・・・はあるよなぁ~。これだけ、私たちの住んでいるところと、文化がそっくりなんだから・・・。


「ただいま。彼女は私の友達の、坂口美里。食事に招待したの。シェフはいる?」


 シェフ?


 そりゃ、想像していなかったといえば嘘になるけど、シェフ?


 うちの食事は、毎日主婦が作っているよ。


「ハイ。ただいま、ご用意させます。一時間ほどかかりますが、よろしいですか?」


 ご用意ですか・・・。


「一時間かぁ~?美里、待てる?」


 私のほうを振り返って声をかけるカオリ。


「も、もちろん!!」


 思わず、声が裏返った。


「では、食卓でお待ちください。あ、美里様。お荷物はお預かりしますが・・・。」


 アルマーニスーツが私に近づき、先ほどから持っている蛍光灯に手をかけようとするが。


「あ、これは大事なものなので、自分で持ってます!」


 大声で断ってしまった。


「・・・・?そうですか?」


 明らかに顔をしかめるアルマーニスーツ。


 そりゃ蛍光灯を片手に持っているだけでも、不自然なのに、それを預かろうとしたところ、大声で断るなんて・・・。


 あぁ・・・私、今絶対このアルマーニスーツの軍団におかしなヤツだと思われたんだろうな・・・。