坂口美里とガルダスト

「鉄人機は、第5階級以上・・・つまり貴族階級の間で、一昔前まで流行った娯楽道具よ。この巨体な身体でダンスをしたり、スポーツをすることはセレブの間では高級思考の遊びの1つとして3年前までは一家に一台はあるぐらいの、流行遊具だったのよ。」


 女性パイロットは、何がおかしいのと言わんばかりの声で答える。


 そ・・・そんな・・・。


「だ・・・だったら、戦争は?悪の組織の対向方法は?こんなマシーンを民間レベルに置いて、凶悪犯罪は横行しないの!?」


 思わず、敬語も崩れ去ってしまう。


 それだけ、ガルダストが民間レベルでの娯楽道具になってしまうのが、ショックなことだったのだ。


「な・・・何を言っているのアナタ?戦争には戦車や戦闘機があるし、悪の組織も、凶悪犯罪も警察官の仕事でしょ?彼らには特別な武器と、それに耐えうるだけの訓練がされているじゃない?どうして、セレブの遊具が必要になってくるの?」


 そうだ・・・まさにそのとおりだ。


 どこぞの頭デッカチの自称理論家(バカ隆)が言っていた。


 本当に戦争兵器を効率的に考えたとき、どう考えても人型兵器は非効率だと・・・。


「え、あ・・・そうですよね・・・。まったくをもって、その通りです・・・。」


 思わず、ショックから肩膝をついてしまう。


「あなた、面白い子ね・・・。名前はなんていうの?」


 手を差し伸べてくれる女性パイロット。


 そこまで来て、ようやく自己紹介をしていないことに気がつく。


「えっと・・・あ、そういえば自己紹介が遅れました。私の名前は美里。坂口美里です。」


 握手をしながらの自己紹介。握る手に力も入らない。


 しかし、どうしてそれだけで警備員が焦った顔をするんだ?