坂口美里とガルダスト


「・・・・・・それは、かまわないですが・・・・」


 困惑気味の警備員の表情。


 いったい、何が珍しいのだとその表情が言っている。


「ありがとうございます!!」


 思わず、お礼の言葉に力が入った。


 いよいよ出てくる。


 パイロットだ。


 ガルダストのパイロットだ!!


 テレビの中では「天和タケル」と言う、15歳の男の子だった。


 正義感が強く、それゆえに人間関係の中で起こる、様々な事件のたびに頭や心を悩ませていた。


 正義感だけでは世界は救えない。そんなことは分かっていながら、己の正義を貫く天和タケルは、私の初恋の相手。


 それにあえる。見える。


 タケルに、天和タケルに!!


「!!」


 しかし、コックピットハッチが開いて、出てきたのはタケルには似ても似つかない・・・いや、それ以上に驚くべき人物だった。


「あ・・・兄貴!?」


 思わず声を張り上げる。


 大きな瞳、長いまつげ、小さな口に高い鼻。


 一見するとそこら辺にいる女性よりも、よっぽど女々しい顔をしている、実の兄、坂口睦月その人だったのだ。


 ある意味では、タケルが出てくる以上の衝撃だ。


「?・・・アナタ誰?」


 しかし、兄貴は私の顔を見ると、私の知っている兄貴とは似ても似つかない声・・・女の声を発した。


 どうやら、他人の空似だったらしい・・・。


 しかし、この顔で女声でもまったく違和感が出てこない・・・。兄貴、情けないぞ。


「え、あ、すいません。私の兄とよく似ていたもので・・・。」


 思わず、頭を下げてあやまる。


 兄って・・・知り合いの『男』に似ているとは、女性に対してこれほど失礼な言葉もないような気がするが、そこは15歳と言う若気の至りということで許してもらおう。