坂口美里とガルダスト


「だから、お前たちみたいな子どもは嫌いだ。何も分かってないのに、全てを知っている気でいる。」


 それが、子どもの特権。


「なら、説明してよ。私たちにも分かるように、・・・私はそれでなくても、頭良くないんだからさ・・・。」


 ここ数日でそれは、いやというほど痛感した。


 私は、兄貴よりもバカな人間だとはな・・・。


「息子の・・・ためだ・・・。」


「へ?」


 突然の言い草に顔をしかめる私とカオリ。


「お前たちだって、小学校で教わっているだろう?この世界の階級制度が努力次第で上がれることぐらい・・・。」


「あ、うん。」


 というか、それは小学校で教わったのではなく、カオリに聞いたのだけど・・・。


「だがな、お前たちは知らないんだよ・・・。俺たち最下級階級の人間は努力する環境すら与えられていないことに・・・。」


「どういうことかしら?」


「この世界は、所詮は金さ・・・俺たちは、日々生きるために働かなくちゃいけない。それこそ学校に行く暇なんてなくな・・・。そもそも学校に行くのだってタダじゃない・・・。どこにそんな金がある?教育を受けなければ、身分も上がれないし生活も楽にならない・・・。アルタスの申し出には、俺たちだけじゃない、他のスラムの連中だってみんなが申し出たよ。たとえ、自分たちは捕まって死刑になるかもしれないが、少なくとも、子どもには裕福な生活を送れる金が残るのだからな・・・。」


「・・・・・・・・・・・」


 押し黙るカオリ。


 そういえば、昔、社会の授業で教わった。


 明治政府によって、身分制度は撤回され、人は平等に生活できるようなった。


 ・・・・・・しかし、だからといって、差別がなくなったわけでもなく、農民や部落の人間の生活が楽になったわけじゃない・・・と。


 ここも・・・ここも一緒なのか・・・。