「信じるなよ、美里・・・。おじさんも、作り話ならもう少しひねろって・・・。」
「いや、ウソじゃないんだけどな・・・。やっぱり、最近の子どもはこんな話信じないか?」
「当たり前だろう?」
隆がそう言いながらも・・・。
「ううん!私、信じるよ。おじさんの家の向かい側に住んでいるお婆さんって、あの、『黒髪の魔女』でしょ?」
ちなみに、命名者は坂口睦月。私の実の兄である。
「え?あぁ、確か睦月くんが小さかった頃、お婆さんにつけたあだ名だっけ?あの頃の美里ちゃん、その話を本当に信じてかわいかったなぁ~・・・。」
あごに手を当てながら、思いっきり昔を思い出に浸るおじさんはとりあえず無視だ。
「オジサン、この蛍光灯の使い方教えて。そして、私、これ買うよ!」
興奮から早口でまくし立てる。少し、最後のほうは噛んでしまった。
「正気か?美里。」
隆の驚いた声。
「隆は知らないんだよ。兄貴がつけたあだ名は、決して私を驚かそうとしてついたウソじゃない。私も兄貴も、あのお婆ちゃんの魔法を直に見ているんだよ!」
私の興奮は収まらない。
それは、まだ二人とも小学生だった頃の記憶。
お婆さんは何でもない割り箸で人形を作ると、呪文1つで、まるで意識があるような人形を作った。
そして、しばらく兄貴と私は、その割り箸と一緒に遊んだのだ。
手品なんかじゃない。アレは、絶対に魔法だ。


