無垢・Age17

 「私に会わせるためにお義父様に頼んでくれたのね」

でもみさとはそう言いながら泣いていた。


「ジンの意地悪」

その時みさとはハッとしたようだ。
親父の前でホスト時代の俺の源氏名を口走ってしまったからだった。


「ジンでいいよ。みさとはその方が呼びやすいんだろう?」


「そう言えばコイツは昔からジンって呼ばれていてな。何時だったか、同級生の男の子に追い掛けられていた。だからまともになってくれて良かったと思っている。みさとさん。コイツのこと、よろしくお願いします」

親父はみさとに向かって頭を下げた。


「だから親父、俺はゲイじゃないって」

照れ臭さを隠しながら必死に言い訳をしていたら、みさとが微笑ましそうに見つめていた。




 ハートの花壇の向こうには、もう一つのサプライズ。

それは愛の鐘だった。


竹林の持ち主と一緒に竹で櫓を組んで取り付けた物だった。




 「親父、此処で愛を誓ってくれないか?」

俺の提案に最初は渋っていた親父は、義母の手を取り二人でその鐘を鳴らしてくれた。


その後でキスをした。


俺達が見ているに……
それはとてつもなく長かった。




 「遠回りさせたお詫びだ。お袋を看取ってくれてありがとう。大切にしてくれてありがとう」

親父は泣いていた。
泣きながら義母に誤っていた。


「お前達もどうだ? 若いんだから俺達より息は続くだろう?」

不意に俺達の方を向いてウインクをした親父。


「ヤだよ。誰が……、乗せようとしても無駄だ」

俺はそう言ってみたが、本当は後悔していた。

みんなの前で堂々とみさととキスが出来るチャンスだったのにと。




 隣町のファミレスでランチ中、親父はこの場合を有効活用してくれることを誓ってくれた。


ハートの花壇と愛の鐘の整備。
そして、駐車場の無料解放。

それは俺が考えた、愛の聖地としてこの地が生き抜くための町お越しのプランだったのだ。


丘の上には休憩所を設けて、パーマカルチャーで作った完全無農薬野菜を販売する。


勿論、新鮮な魚介類もだ。


そして出来れば、又自動車工場も復活させてほしい。

それがきっとこの地に暮らす大勢の人の夢だと思うからだ。


本当にそんなことが出来るか半信半疑だ。
でも何かを遣らないと俺の産まれたこの郷が寂れて行くばかりだと思っていたのだ。