無垢・Age17

 つまり、ライトアップの代わりに蝋燭の炎でロマンチックに演出をしょうと思ったんだ。

あの人に言われた火の着かない工夫をした後で。


その不燃物材料は石だった。
小さ目な薄べったい石を竹の中に置く。
たったそれだけだった。




 勿論、今から種を蒔いたのではホワイトデーには間に合いっこない。

仕方なく花屋を訪ねてみようかなとも思っていた。


でも春は、俺を見捨てなかった。

その丘の周りには、沢山の雑草の花が咲いていたのだった。




 菜の花、薺。
仏の座にイヌフズリ。

その他色々なカラフルに咲き誇る春の花。


そう言えばみさとは菫が好きだと言っていた。

華やかでいて控えめなみさとにピッタリな花だ。

俺はハートの真ん中に菫、周りには菜の花で飾ろうと思っていた。




 予定していたホワイトデーの御披露目までには余り時間が無い。

それに何時みさとに気付かれるかドキドキだった。


勿論緑のシートで覆ってはある。


それでも細心の気を配ることにした。




 何時、話出してしまうか昨日までドキドキだった。

どうやら俺は、みさとには嘘が付けない性格のようだ。


卒業して、ずっと家にいるみさとの目を盗むのは並大抵なことではない。


それでも何とか、ホワイトデーの前日を無事に迎えることが出来た。

俺はそれだけでホッとしていた。




 ホワイトデーの朝。
俺はあの場所にみさとを案内した。


緑のシートを外すと、現れた小さな花壇。

そのハートの真ん中の菫にみさとは目を奪われていた。


してやったりと思いながら、おもむろに丘の向こうに手をやった。




 「あっ!?」
思わずみさとが叫んだ。

其処にはもう一つの、俺が仕組んだサプライズがあったのだ。


それは、みさとの母親と俺の父親のツーショットだった。


「お母さん……」

思わず走り出したみさとの手を俺はそっと放した。


喜び勇んでみさとが母の胸元に飛び込む。

俺がこの日に一番見たかった光景だった。




 実は俺は父に頼みごとをしていた。
それは、昨日の大学の卒業式に俺の代わりに出席してもらうことだった。


その流れで此方に来てもらうためだった。


「はい、卒業証書」

親父は俺の顔を見るなり言った。


みさとに出席していないことがばれた。
そう思った。