「此処から出発だ」
アイツが力強く言った。
「まだ間に合うな」
アイツはそう言いながら太陽を気にしていた。
アイツは私を促し、乗船させた。
「クリスマスは、日没までだって知ってた?」
その問に頷く。
「だったら判るね。俺はクリスマス中にみさとが欲しい」
アイツはそう言って、船に積もった雪を払った。
アイツと一緒に乗り込んだ漁船。
私は嬉しさのあまり興奮していた。
アイツが上着のボタンを外す。
私はそれを受け取り、漁船の底に敷いてその上に横たわった。
そしてアイツの指が私に触れてくるのを待った。
でも私はあのハロウィンの出来事を思い出し震え出した。
呼吸困難。
全身痙攣。
それはパニック障害を通り越していた。
私は何時しかアイツに抱いてもらえる日を夢にみていたのだ。
思いがずに叶おうとした瞬間に、体が硬直してしまったのだった。
嬉しさのあまりに……
頭の中は真っ白だった。
何をどうしたら良いのか解らなくて、途方に暮れていた。
口の中が異常に渇き、手が小刻みに震える。
混乱した頭を整理出来ない。
そんな時もアイツはただ抱き締めていてくれた。
そんな行為が嬉しくて、私は救いの手をアイツに向けようとした。
その時気付いた。
手にも力が入らない事実を。
私は大好きなアイツも抱き締めることも出来なくなっていたのだ。
全身を痙攣させたままだと、アイツにも迷惑をかける。
私はただただ申し訳なく思っていた。
それでも息は苦しい。
私は必死にビニール袋を探した。
歌舞伎町で掌で呼吸したことを思い出す。
私は仕方なく、手を口元に運ぼうとした。
でもその手をアイツは握り締め、私の体の上に覆い被さってきた。
それはあの時と同じ、人工呼吸のマウスツーマウスだった。
(あ、又……えっ、又って? 前にもあったの?)
アイツの息が唇を通し体の奥底へと入ってくる。
その瞬間。
歌舞伎町での記憶と共に、私の意識もよみがえった。
私は生き返ったのだ。
アイツが力強く言った。
「まだ間に合うな」
アイツはそう言いながら太陽を気にしていた。
アイツは私を促し、乗船させた。
「クリスマスは、日没までだって知ってた?」
その問に頷く。
「だったら判るね。俺はクリスマス中にみさとが欲しい」
アイツはそう言って、船に積もった雪を払った。
アイツと一緒に乗り込んだ漁船。
私は嬉しさのあまり興奮していた。
アイツが上着のボタンを外す。
私はそれを受け取り、漁船の底に敷いてその上に横たわった。
そしてアイツの指が私に触れてくるのを待った。
でも私はあのハロウィンの出来事を思い出し震え出した。
呼吸困難。
全身痙攣。
それはパニック障害を通り越していた。
私は何時しかアイツに抱いてもらえる日を夢にみていたのだ。
思いがずに叶おうとした瞬間に、体が硬直してしまったのだった。
嬉しさのあまりに……
頭の中は真っ白だった。
何をどうしたら良いのか解らなくて、途方に暮れていた。
口の中が異常に渇き、手が小刻みに震える。
混乱した頭を整理出来ない。
そんな時もアイツはただ抱き締めていてくれた。
そんな行為が嬉しくて、私は救いの手をアイツに向けようとした。
その時気付いた。
手にも力が入らない事実を。
私は大好きなアイツも抱き締めることも出来なくなっていたのだ。
全身を痙攣させたままだと、アイツにも迷惑をかける。
私はただただ申し訳なく思っていた。
それでも息は苦しい。
私は必死にビニール袋を探した。
歌舞伎町で掌で呼吸したことを思い出す。
私は仕方なく、手を口元に運ぼうとした。
でもその手をアイツは握り締め、私の体の上に覆い被さってきた。
それはあの時と同じ、人工呼吸のマウスツーマウスだった。
(あ、又……えっ、又って? 前にもあったの?)
アイツの息が唇を通し体の奥底へと入ってくる。
その瞬間。
歌舞伎町での記憶と共に、私の意識もよみがえった。
私は生き返ったのだ。


