(神様ひどいよ。どうせならもっと格好いい人なら良かったのに)

そんなこと考えながら頭を振る。


(どんな人だって絶対にヤだ!!)
私は駄々っ子のように体を揺さぶった。

その拍子に掴まれた手を振り払うことが出来た。

自分自身が押さえられなくなり、目の前にいる男の顔を叩く。

その途端。
見る見る顔色が変わり、再び手を拘束された。


(ヤバい!! ってゆうか……手首が痛い!!)
私は半べそになっていた。


(諦めるしかないのかな? でも、ヤだ!! 絶対にヤだ!! お願い誰か助けて!!)




 その時祈りが通じたのか、私の体から手が離れて行く……。


(えっ、何が起こったの?)

何が何だか判らない。
でも嬉しかった。

体に感じる男性の気配が遠退いたことが。


(あぁ神様ありがとうございます!!)

私は嬉しさのあまりに興奮していた。


「この子がこんなにイヤがっているじゃないか!!」
誰かが叫んでいる。

私はその人を見るために自ら目隠しを外した。


その声の方向を目を向けると、一人の男性が其処に立ちはだかってくれていた。


大きく広げられた腕は、まるで私を後ろに隠すように……

頼もしいガッチリした背中が其処にはあった。




 正直助かったって思った。
でもアイツ一体何者?
ド派手な服で決めているけど全然格好良くない。


「ありがとうござい……」
そう言いたい。
でも恐怖のあまり声が出なかった。


アイツはまるでピエロのような衣装を着ていた。

赤い大きな水玉模様なんて、それ以外には考えられない。


(何かチンドン屋さんみたい)

失礼だと思う。
命の恩人をそんな風に例えるなんて。

でもそれしか考えられなかったのだ。

それほど私はアップアップしていた。

田舎を出る時に着けていたウィッグが外れていることにも気付かずに……

そう……
私はさっきまで上半身がはだけたままでベッドに寝かされていた。

そのガードと、ジーンズ死守だけで精一杯だったのだ。




 「カー、ットー!!」
突然声がかかって、辺りが明るくなった。


(な、何なんだ?)

私は呆然としていた。


「あれっ!?
監督この子違いますよ」


(ん!? 監督だー!? それって何者!?)