無垢・Age17

 あのハロウィンの日。
何故俺があの場所を走行していたかと言うと……
話は長くなる。
手短に言うと、スタジオの下にある花屋へ向かう途中だったんだ。
花屋なんて何処にでもあるさ。
でも俺の拘り。 血の滴る様な深紅の薔薇を探すためだった。

今日はハロウィンだよ。
道化者のピエロが本当は死神だった。
なんてストーリーだったんだ。

それには新鮮で、生々しい薔薇が必要だったんだ。


ハロウィンが元々ケルト人のお祭りで、お化けの格好をして悪霊や悪魔を追い払う行事だったってことは知っていた。

それでも、お客様を楽しませるためにホスト全員が知恵を出しあって考えたから嫌だなんて言えなかったんだ。




 あの花屋が頭に浮かんだ時、素直に新宿駅東口方面へ向かっていたんだ。
まさか、彼処で弟に出会うなんて想像すらしていなかったんだ。

だからつい嬉しくて長話をしてしまってた。




 俺の向こう側で白昼堂々と拉致される女性を見て、何て言う男達だと思った。

それがみさとだと気が付かなかったんだ。


『みさとが、みさとが……』
そう言った弟の顔は真っ青だった。

その言葉で、今連れ去られたのがみさとだと知ったんだ。


とんでもないことをしでかしたと思った。

俺が弟に声を掛けたばっかりに……

そう思うと心が傷んだ。




 でも、そんなことしている場合ではない。

俺はかろうじて、正気を取り戻した。


俺は直ぐにバイクを走らせ、とりあえずみさとを拉致した車の姿を見失わないようと思いながら追ったんだ。




 『良かった。無事で』

号泣するみさとの体を思わず抱き締めていた。
我慢が出来なかった。


後を着けて駐車場に入って、ようやく車を見つけた。
でも中に誰も居なかったんだ。
俺は焦った。
焦りまくった。

だから後先考えずに抱き締めていたんだ。


『俺は兄貴の友達で、歌舞伎町でホストをやっている者だ。俺が話し掛けたからこんなことになってしまった』

それでも弟を待ちきれず語り始めた。
全てが自分の責任だと言わんばかりに。


(違う、俺が彼処を通ったからじゃない。一番悪いのは、コイツらだ!!)
俺は現場にいた五人を睨み付けていた。

監督とカメラマンと俳優陣。
其処には確かに五人いたのだ。