そんなもん、すぐ消えると思ったんだ。

でも無理だった。


自動車工場の技術指導員の親父は転勤族だった。
だから俺は何時も好奇心の目で見られていた。

虐めの対象にもなったよ。
同級生が信じられなくなっていた。
そんな時にみさとと出逢ったんだ。


みさとの真っ直ぐな視線が、俺を好きだと言っていた。
だから俺はそんな気持ちに応えるべく、紳士的な態度で接しようと思ったんだ。


ワガママなお嬢様より、上目遣いで見るおネエ系少年より、みさとが良かった。
俺はずっとみさとと暮らしたかったんだ。


今思うと、俺はこの時からみさと一筋だったのかな?
だから誰にもトキメかなかったのかな?


そうだ。
俺はきっと、みさとと赤い糸で結ばれていたんだ。

だからみさとがこんなにも愛しいんだ。




 みさとに逢えて俺は変わった。
愛すること。
信じること。
守るべき人の存在する喜びも、教えてもらった。
だから、どんなことがあってもみさとを守り抜く。


俺は、俺の父とみさとの母親の前で誓った。


帰りの車内でも言ってみた。
本当は照れ臭くて仕方ないけど、俺の本音を聞いてもらいたくて。

みさとは泣いてたよ。
こんな俺のために泣いてくれたよ。
俺にはそれが一番のご褒美に思えたんだ。





 実は……
俺は本当は諦めていたんだ。
みさととの結婚を。


俺は本当にみさとが大好きだったんだ。
日本に戻ってきた本当の理由は、ニューハーフの彼に迫られたからだけじゃないんだ。

みさとが脳裏に浮かんできて、どうすることも出来なくなったからなんだ。

俺は思い知らされた。
本当に大好きな人が日本にいることを。

だから日本に戻って来たんだ。


俺がチェリーとさようなら出来る相手は、みさと以外いないと思ったんだ。




 俺はホームステイした時に、弟と文通を始めたんだ。

弟は俺が本当の兄だと聞かされていたんだ。
だから日本に戻って来た時に連絡したんだ。


でも弟に電話して……
みさとのことに触れ時、妹だと言われてしまった。

嘘だと思った。
ホームステイの時から恋い焦がれていたイトコが、兄妹だと知らされて……

だって弟の言う通りに、本当の妹だったらって思ってしまったんだよ。


祖母のある言葉を思い出して……


『非は全て自分にある』
と祖母は言った。