『チェリーボーイって言うのはね。日本だと未経験者という意味かな? でも英語では違うのよ。同性愛者での未経験って言う意味なのよ』
社長の説明してる。
でもそれだけじゃ駄目だと感じた。
だってみさとが知りたいのはあくまでも、チェリーボーイなのだから。


『週刊誌にゲイだと書かれていただろう? それも未経験だからチェリーボーイってタイトルだったんだ。ま、知ってる者は知ってるって感覚かな?』

だからそう言ったんだ。


彼奴は本当に、俺のチェリーを狙っていた。
チェリーボーイも卒業させようとしていた。


でも本当のところ、彼奴もチェリーだったんだ。

お互いに……

彼奴はそう願っていたのだ。


俺は知りながら、そんな彼奴の思いを拒み続けてきた訳だ。




 でも諦めてくれたんだ。

その代わりが、ニューハーフへの転身だったのかも知れない。

彼奴が本当の女性だったら、こんな思いはしないし、させない。

勿論、みさと以外にチェリーをくれてやりたくなかったのだが。


でも俺は……
結局逃げて、社長に救いの手を求めたんだ。




 社長は、日本から来たタレントの案内役だった。
だから俺は彼女を頼って日本に戻ったんだ。


彼女はオーナーのお譲さんのベビーシッターだったらしい。

俺を見て、その子の婿にと思って紹介してくれたらしいんだ。
そんなこと俺は知らずに、あのマンションで暮らし始めたんだ。


俺にはみさとがいる。
俺のイトコの初恋の人がいる。
だからとにかく日本へ戻りたかったんだ。


男性より……
ニューハーフになった彼女より、みさとを抱き締めたかった。

俺はその時、みさとと結婚したくなったんだ。




 俺は中学生の時、小学生のみさとの魅力に遣られた。それ以来、俺はずっとみさとに恋い焦がれている。

みさとはその時から高身長で、姿だけは大人びていた。
でも仕草は少女のように可愛らしかった。


特に、恥ずかしそうに俺を見つめる眼差しは忘れられない。


だからなおのこと、みさとはあのままでいてほしかった。

俺の故郷の香りを身に付けたままで。




 ホームステイした時、みさとは俺を見ていた。

あどけない表情で俺を見つめていた。

その途端。
俺の恋心に火が着いた。


なすすべもなく燃え上がる炎。
俺はただ、もて余していた。