花も雪も



払へば清き袂かな




ほんに昔のむかしのことよ




わが待つ人も我を待ちけん




鴛鴦の雄鳥にもの思ひ




羽の凍る衾に鳴く音もさぞな




さなきだに心も遠き夜半の鐘




聞くも淋しきひとり寝の




枕に響く霰の音も




もしやといつそせきかねて




落つる涙のつららより




つらき命は惜しからねども




恋しき人は罪深く




思はぬことのかなしさに




捨てた憂き 捨てた憂き世の山葛