明奈達のクラスから離れている俺のクラスまで、その噂はあっという間に届いてきた。
山口が、男子バレー部の”川口”と付き合っているのを耳にして知っていた俺は、川口が不憫で仕方がなかった。
川口は同じクラスだったから、俺は昼休みに話しかけてみたんだ。
「なぁ?川口。お前、彼女が『鬼母ちゃん』とか言われてて嫌じゃねぇ?」
「あははっ。突然、何?僕は別に気にならないよ?噂は間違ってないし?」
そう言いながら、予想外にも川口は笑ったんだ。
普通は嫌だろ?
あんな悪口めいた事を言われてるとか…
俺がそう思っていると、それが顔に出てしまっていたのか、川口は微笑みながら話を続けた。
「美樹が明奈をひいきにするのは、今に始まったことじゃないんだ。僕は、友達を大切にしている美樹が好きなんだよ?」
「そりゃあ、友達を蔑ろにする奴よりかはいいかもだけどさ…」
「彼氏にばかりかまけて、友達すら大切に出来ないような子の方が、どうかと思うけど?」
「……だな。」

