入部当初に戻ったんじゃない。
それよりももっと悪い。
明奈から感情そのものが抜けた落ちた様な、それこそ本当の人形みたいに変わり果てた。
何がお前の笑顔を奪ったんだ…
そんな最中、更に事件は起きた…
夏休み中の部活は、バレー部とバスケ部の練習が午前と午後に分かれる事になって、バスケ部は男子と女子で半面ずつ使っていた。
10時を過ぎた頃女子は休憩に入り、明奈は山口と二人で話をしながら体育館の内壁を背にして座っていたんだ。
その明奈の前に、男バス2年の先輩がミスったボールが転がっていった。
明奈は無表情のままボールを拾い、先輩に渡した。
そしたら先輩が何かを話しながら、明奈の肩に手を置いたんだ…。
触ってんじゃねぇよ…
俺が悔しそうに顔を歪めた時、明奈の異変に気付いた。
突然、顔を真っ青にしながら体を震わせて、呼吸が浅いのか肩を小刻みに上下させている。
先輩が心配そうに何かを言ってるが、聞こえない…
なのに、山口の声だけは、ハッキリ聞こえたんだ。
『離れて下さいっ!!』

