5月に入り、明奈は正式に入部してきた。
女バスと男バスは、時間交代でコートを使用していたから話すきっかけもそうなかった。
でも俺は、あの人形が気になったんだ。
アイツ、笑う事あんのか…?
最初はそんな興味本意だった。
俺は部活の休憩時間に、体育館の外にある水道で顔を洗っていたんだ。
明奈の笑顔を見る機会が訪れるとも知らずに…
顔を洗い終わってタオルで拭いていた時、少し放れた草むらの中から…
『うわぁわわっっ!』
と、声が聞こえてきた。
声のした方へ視線をやると、そこには尻餅をついて座っている明奈がいたんだ。
何をしているのか気になってしばらく見ていると、明奈が独り言の様に話し出した。
「もうっ!びっくりさせないでよぉー。踏んづけちゃうところだったじゃん?」
…ん?人はいない…
何か生き物がいんのか?
「ほらぁー…、歩くの遅いんだから転がりなよー。」
こっ…転がる?
転がる生き物…
亀…は転がらないよな?多分。
「はーい。コロコロコロー!」
転がしてんのかっ?!

