「やっと気付いてくれた。」
そう言って、ナオは紙袋のある方に歩いて行き、それを持って来てくれたんだ。
ナオは、
『あそこに座ろう。』
と言って、指を指した。
ナオが指し示したのは、劣化しかけたプラスチック製のベンチ。
ベンチに向かって歩き出すナオを見て、私は漸く立ち上り近付いて行った…。
ナオから少し離れた横に腰掛けると、ナオは紅茶の缶と膝掛けを私に渡す。
『…ありがとう。』
と言った私は、続けて話し出した…。
「何で、居るの…?制服は、どうしたの?」
「中村さんに連れて来られたんだ。制服は、佐々木君の物だよ?」
「絵里とカイが……。」
「佐々木君は不満そうだったよ?朝早く俺の家に来てさ”これを着ろ。返す前にクリーニングに出せよな”って言ってた。」
「カイ……。」
今日、この学校に入る為にカイの制服をナオに貸したんだ…
カイ…嫌な思いをさせちゃったかな…?
でも、何で絵里はナオを連れて来たの…?

