---- 修学旅行当日。
新幹線に乗り込む前、明奈に小さな声で、
『今日の夜、部屋に行くね?』
と言ったんだ。
俺はただ、門限の早い明奈とゆっくり二人で話したいと思っていただけだった。
明奈は目を泳がせながら、
『分かった。』
とだけ言った。
それから新幹線の中で、明奈と同室の平山に夜行くから協力して欲しいと頼むと、平山は曖昧な笑顔を浮かべながらも承諾してくれた。
昼間は、明奈とは違うグループ班だったから、俺は夜に会える事を心待ちにしていたんだ…。
だけど…そうやって浮かれて明奈の部屋の前に立った俺は、明奈から初めて拒絶されたんだ…。
部屋の扉から出てきた平山の後ろから、平山に話しかけてるだろう明奈の声が聞こえてきていた。
「ごめん。会いたくないって、言って…?」

