明奈の心の中には、まだナオがいる。
俺と、楽しそうに話している時もだ。
そんな事、あの時から分かってたじゃねぇか。
今更、俺まで、動揺すんなっ。
俺は一度瞼を閉じて、そう自分に言い聞かせながら、明奈に、
『親父さんと、来たんじゃね?喫茶店偵察とか。』
と言ったんだ。
明奈はホッとした表情に変えて、
『う、うん。そうだったかも。』
と言った。
その会話は、それで終わったんだ。
だけど、俺の中のドロドロした奴が煩くて、映画の内容なんか分からない位に、上の空だった…。
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その映画の日からも、俺は相変わらず明奈達と居続けた。
今の立ち位置から、身動きがとれなくなっていたんだ。
明奈の彼氏だなんて”夢のまた夢なのかも”と、半分諦めていた気持ちもあったのかもしれない。
何も出来ない俺は、ただの【臆病者】だった…。

