事件簿

花鈴の部屋の前に立つと、静かに斎藤が戸をあける。

「花鈴、お茶が入った。」
「あ、一君。ありがと!」

そこには花鈴に永倉、そして土方の姿がある。

「花鈴、お茶菓子もあるからなっ!」
「なんだ、平助。気がきくじゃねぇか。」
「ちげぇよ、土方さん。これは花鈴にって買ってあったものなんだよ。」

お茶菓子に手を伸ばそうとしていた土方の手を原田が払い、花鈴の前におく。

「は、原田。今日は酷かねぇか?」
「んなこたぁねぇよ、土方さん。」
「花鈴、冷めないうちに飲むといい。」
「ありがと、一君。」

花鈴はまだ湯気のでるお茶を斎藤からもらうとは一口飲む。

「…?」

いつもと違う茶っぱに気づいたのだろうか、花鈴は首を捻る仕草をする。

「も、もしかしたら口に合わなかっただろうか?」
「いや…そんなんじゃないけど。なんとなぁーく味が違うなぁって。」

びくりと身体を震わせる斎藤たち。

「このお茶、一君がいれたの?」

やはり、お茶好きには叶わないらしい。
すぐに味の違いに気づいた。

「おい、原田。俺の湯のみはどうした?いつもと違うじゃねぇか。」

再びびくりと身体を震わせる斎藤たち。
それをみた花鈴はにやりと口元を歪ませた。

「ま、いいや。お茶菓子、もらうね。」

ほっと胸をなで下ろす彼らに花鈴の笑みは気づかれない。

ニャーーッ

「「「「「!?」」」」」

何故ここに猫が…と藤堂たちの視線は猫へと向かっていく。

「あ、にゃんた。どうしたの?」
「そ、その猫って…」
「どうからみても台所荒らしの猫…」
「台所荒らしの猫だぁ?」

土方はドスの聞いた声でギロリと藤堂たちを見る。

「ちょっと馬鹿!平助!!」
「やっべ!」
「へぇ、じゃあ俺の湯のみは…」
「私の愛用している茶っぱも…」

花鈴と土方に追い詰められた藤堂たち。

「ちょっとまってくれって!これには事情ってものが……!!!」
「問答無用!てめぇら夕餉は抜きだっ!」