「あーあ、もう僕知らないから。」

沖田も猫を捕まえることができなくなると分かったのか、柱に寄りかかる。

「これではどうしようにも…すまない、花鈴。」
「あ?なんの話だ、斎藤。」

嘆く斎藤に土方は聞くが、黙ったまま斎藤はうつむく。

「僕、もう知らないですからね。」
「だから何の話だって聞いてるだろうが。」

柱に寄りかかる沖田も呆れ、猫がいった方向をみる。

「後は平助たちに任せるしかないよね、一君。」
「あ、あぁ。」
「んじゃ、そう言うことで土方さん。後は自分のせいだと思って僕たちを問い詰めるのをやめてくださいねー。」

ひらひらと手を振る沖田に続き、斎藤もその後をいく。

「おい、山崎。一体総司は何の話をしていたんだ?」
「いえ…特に何も。副長はそれを聞くと沖田さんや斎藤に怒りを落とされると思うのでやめておきます…」

クスクスと滅多に笑わない山崎が笑うのを土方はふっと笑う。

「ま、いいんだかな。」

問い詰めるのを諦めた土方はやれやれと腰に手を当てる。

「おい、山崎。」
「なんですか、副長?」
「楽しいか?」

ギョッと山崎はなる。
まさか土方からそんな言葉をもらうとは思ってもいなかった。

「…楽しいですよ、とても。」
「そうか。」

犬猿の仲だと花鈴や斎藤に言われたが、今回ばかりはそんな事を言われたくないと山崎は思う。

「山崎。これからなにか起きるかもしれねぇが…」
「なにいってるんですか、副長。俺はずっと副長について行きますよ。」

山崎はふと思う。

そう言えば入隊したばかりのときの事を。
土方は、彼らは俺を優しく、温かく俺を迎えてくれた。
そんな彼らにいつか…




恩返しをしてみたいと。


さわさわと中庭にある桜の木が風に揺れる。

そんな2人の姿を今まで寝ていた花鈴はへぇ…と感心した。

と、そこに猫が飛び乗ってくる。

「あら、私の愛用している茶っぱを落としたらしい猫じゃない。」

花鈴は猫を捕まえると頭を撫でる。

「楽しいねぇ、今日もにぎやかで。」

すっと目を細めた花鈴は身体を起こすと藤堂たちがいるだろう台所へと向かう。