この事件はあることで始まった。

「おっおい!左之っ!!」
「あぁ?なんだ、新ぱ…って猫じゃねぇか!」

ひょいっと軽快に一匹の黒猫が台所へと入っていく。
それを呆然とみていた2人はがしゃんっと食器が落ちていく音に気がついて慌てて台所へと入っていく。

「うわっ!これ土方さんのお気に入りの湯のみじゃねぇか!」
「これは花鈴ちゃんが愛用している茶っぱだろっ!?」

辺りにはすでにもう、バラバラになった皿が、湯のみが転がっている。

「さぁーのさーん!ってあれ?さっき新八っあんといた気がしたんだけどなぁ。」

陽気な藤堂の声に原田はひょいっと顔をのぞかせた。

「おい、平助。誰も周りにいねぇよな?」
「はっ?…いねぇけど?」
「よし、だったらこっちに来い。」

手招きする原田に藤堂は首を捻りながら台所へ入って行く。

「うわっ!なんだよ、これ!左之さんがやったのかよっ!?」
「ちよっ、平助!大声出すんじゃねぇよっ!」

原田が藤堂の口を慌ててふさぐ。

「もがっ!!」
「ちげぇよ、平助。猫だよ、猫!」
「猫ぉ!?」

大声を出したことにはっとして藤堂は口元を抑える。

「でもなんで猫が屯所に?」
「わかんねぇよ。俺らも勝手場を通ったら猫がいきなりきたんだよ。」
「とにかく、土方さんや近藤さんがくる前にどうにかしねぇと。」
「どうってどうすんだよ。この土方さんのお気に入りの湯のみどうにもできねぇよ。」

「「「うーん。」」」


腕組みをしてかんがえる3人。

「そうだっ!まず一君や総司に話してみようぜ!」
かんがえる斎藤はともかく、総司なんかは言いそうじゃねえか?」
「それぐらい事情ってものを話せばぜってー、わかるって!」

どうだろうと原田は言うが、永倉は乗る気だ。

「そうだな、んじゃあいまから斎藤と総司を探そうぜ。」