最愛~あなただけが~

「すっかり遅くなったなー。
 ごめんね。こんな時間まで。」

 修正とチェックが全て終わったのは、もう21時を回った頃だった。
 店舗も駐車場も真っ暗。しかも寒い。

「都築さん、お腹空いてない?」

 シャッターを閉めながら、鷹野さんは振り返って私に聞いた。


「腹ペコです。倒れそう。」

 鷹野さんに聞かれて、私はお腹をさすりながらふざけて答える。

「じゃあ、近くの居酒屋で食べて帰ろうか?
 車だから飲めないけど。」

「・・・えっ?」


 突然のお誘いに、数秒、頭の中が白くなった。

「美味い店知ってるんだ。
 今日は都合悪い?」

「あっ。いえっ!
 全然構いません。」

 私は、慌てて答える。

「じゃ、行こうか。」

 
 歩き出した鷹野さんについて、私も歩き出した。


(残業代より嬉しい残業代・・・)


 嬉しくてニヤけそうになる顔を、慌てて意識して引き締める。