最愛~あなただけが~

 面接の日、私は朝から会社に

『2時間ほど遅刻する』

 と、連絡を入れて、リクルートスーツに身を包み、準備をしていた。


 鷹野さんは、あの日からずっと熱が下がらないらしく、もう3日休んでいる。

 私もやっぱり感染ってしまったようだ。
 今朝、起きた時点で38℃超えの熱。
 正直、身体が怠い・・・

 

 得意の演技力で面接官の心を掴んで、採用を勝ち取って来よう。


 佳に言われた台詞をそのまま頭の中で呟いてみる。





 化粧をしながら鏡に映る自分を見ていたら
 今の会社に面接に行った3ヶ月前のことから今までの、鷹野さんのことが急に脳裏に甦った。


 あの日、鷹野さんが着ていたスーツやネクタイ。
 少年みたいなやんちゃな笑顔。
 タバコに火を点ける瞬間の表情。
 屋上で鷹野さんがくれた缶ココアの温かさ。

 鷹野さんは、いつも穏やかで優しかった。
 私を笑わせてくれた。