どっさっと音を立ててカバンが床に落ちる

はあ、と大きなため息をついて帰宅そうそうビールの缶を開ける

すきっ腹に飲むと酔うんだよな、とふと思う

テーブルにビールの缶を置いて、ソファに体を沈める

天井を見上げれば、今日の出来事が思い出される

どの患者だって助けたい

でもその中でも知り合いとなれば、特に自分より年下となればどうしても、と思わずにはいられない

ぎゅっと唇と引き結ぶのと同時に手の近くにあった服を握りしめる

わかっていた

なんとなく

医者の直観だろう、が告げていた

桜は運び込まれたときすでにかなり時間がたっていた

あの状態から蘇生してもきっと障害が残る

最悪の場合、こん睡状態か植物状態かも知れなかった

それでも…

へこむなー、とふと苦笑する

患者を助けたいから、残された辛さを少しでも減らしたいから医者になったのに

また助けられない自分が居る

肩を落として帰るご両親と高校生になったばかりという弟の背中が目に焼き付いている