留学という側面から考えると短い

やることがありすぎて日々が淡々と終わっていく

けれどしるふがいないということから考えると長い

そばにいることが、いつでも声を聞けることが、その姿が目見入ることが大切だと、自分には必要だと思い知らされる

ぶーと携帯が振動して再びメールの受信を知らせる

「もー!!少しはいい反応してよ!!面白みがないわ!!浮気してるんじゃないでしょうねー」

少しすねるしるふの顔が浮かぶようで、海斗はメールを読みながら微笑む

「だから浮気したくてできる性分じゃないって」

ぼそっとつぶやいた声は、しんと静まり返った部屋に吸い込まれて消えていく

一年住むのだから一応家具はいろいろ揃えたけれど、必要最低限のものしかないので部屋は閑散としている

唯一存在感があるのは医学書やら参考書やらが並ぶ本棚だ

しるふと出会う前のマンションの部屋のようだとドイツに来て1か月したころにふと思った

どうやら何もしないとこういう部屋になるらしい、自分は

「ま、これでアイドルのポスターでも張ってようものなら幻滅するんだけどね」

しるふが初めて海斗の部屋に来た時に放った言葉だ

その後に写真を飾ったのもCDを持ち込んだのも空いていたクローゼットのスペースに自分の着替えを入れるラックを置いたのも、他ならぬしるふだ