あの時も、これからも

ふと顔を上げたしるふは白衣のポケットに携帯を入れて歩き出す

その顔は海斗の前で見せるものではなくすでに医者としての顔になっていた

穏やかな雰囲気でロッカー室を出ていくしるふの首にかかっているシルバーリングが窓からの光できらりと光る

内側に掘られている文字が浮かび上がる

海斗から贈られたペアリング

右手の薬指に居座って2年ほどが経つ

しっかりとはまるそれは海斗としるふの変わらぬ気持ちの証



大丈夫

あの声が優しさをはらんでいる限り海斗を待っていられる

それだけ過ごした時間は長いから

大切なものを積み重ねてきたから