「まーね、医院長はほぼ隠居状態だし、もともと副医院長って言う立場だったわけじゃないからね、大変だもんね」

仕方ない、ここは譲ろう

相変わらずしるふを副医院長夫人としての舞台に引きずり出す気がないようだから

真っ白でいてほしい

そう、海斗が望むのなら

愛娘とともに家で待っていようと決めた

「ね、海斗」

再び二人の視線が交差する

ふと口元に笑みを宿し、しるふはゆっくりとつぶやいた

放った言葉は一瞬で消えていくけれど、ずっとずっと想いはここにある

だから何度だって伝えるのだ

言葉にのせて、想いをこめて

ちゃんと届くように

優しく腕が肩に回り、そっと額がぶつかる



何度も巡る時を、あなたと数えていけたら

未来の「あの時」を想うことができたのなら

胸に抱くこの想いをずっと言の葉にのせていける

愛してるー

そう、ずっとずっと、歩いていける…








あの時も、これからも       -完-