空を見上げれば澄んだ水色が一面に広がっている

吹く風も穏やかで、さらさらと風に撫でられた桜が鳴る

淡いピンクの花弁が時々ひらひらと舞い落ちていく

それは、しるふの胸に付けられた小さなコサージュと同じ色

何度だって咲き誇る始まりの色


ゆっくりと瞳を開ける

と、同時に開く大きな扉

真っ直ぐに伸びる絨毯とその先にいるたった一人の人

その道をしるふは、独りで歩く

「雪姉、由斗兄、今までありがとう。…行ってきます」

凛とけれど柔らかに、しっかりと顔を上げるしるふに

小さく頷きながら笑みを宿し

「「行ってらっしゃい」」

もう、きっとしるふ相手に言うことはないその言葉を、ゆっくりとかみしめるように放つ

そっと踏み出した一歩は、いったいいつだろう

海斗に出逢った時だろうか

いや、きっと父と母を亡くした時

あの時から止まってしまった時間を、今、ゆっくりと思い出しながら歩む